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植物の変化を楽しむ「ボタニカルライフ」
案内人
第一園芸 黒木 勝さん
第一園芸 黒木 勝さん
第一園芸の店長、スーパーバイザーを経て、花や緑のあるボタニカルライフを提案するショップ「BIANCA BARNET BY OASEEDS」(東京ミッドタウン日比谷)などの企画・統括を担当。花と緑の知見を生かし、インテリアグリーンの観点からホテルや商業施設等のコンサルティングを行っている。
5月4日はみどりの日。毎日の暮らしに刺激と癒しをくれる植物を、お部屋に取り入れてみませんか?今回は、植物を楽しむコツや、プロが教える飾り方のポイントをご紹介します。
手を加えて自然を楽しむ、
日本流ボタニカルライフ
古くから植物と人との距離が近かった日本では、花や緑が暮らしのそばにありました。室町時代には早くも文化としての園芸の独自性が強まり、江戸時代には、自らの美的感覚を反映した植物を愛でる文化が身分を問わず爆発的ブームに。当時から、ソテツやセッコクなどの斑入りや変わり葉も人気があったようです。また、挿し木や接ぎ木、盆栽や剪定など、人の手を加えることでより自分好みに仕上げていく技術も発展してきました。日本では昔から小さな植物に自然の光景を重ね合わせ、自ら手を加えながらボタニカルライフを楽しんできたのです。
この春は、そんな先人たちに倣って、自由な感性でボタニカルライフを始めてみませんか?植物の個性を見極めて自分好みに育てられる、“進化するインテリア”の世界へと誘います。
曲がり方が魅力的!?
個性派の植物をお部屋に
切花に観葉植物、エアプランツに多肉植物……。一言で植物といっても、人によってその好みも、設置するインテリアも異なります。そんな中で黒木さんがおすすめする選び方は、まず何よりも「気に入った個体を選ぶこと」。植物の品種を選ぶということに限らず、同じ種類の植物でも、大きさや色、葉のつき方や花の咲き方まで、一つひとつ異なります。よく見ると葉が多かったり、他とは枝の形が違っていたり。さらに、木が曲がっていたり歪んでいたりと、一見すると欠点のように見える部分にこそなぜか惹かれてしまいませんか?人間の世界にも通じるような多様な植物の世界。個性的な植物のなかからお気に入りを見つけ出す一期一会の出会いを楽しんでください。
迷ったら、無難なものよりも、インパクトのあるもの。空間になじむものより、空間の印象を変えるもの。植物自体が主役になる個体を選んでみてください。壁紙やソファを変えるのは大変ですが、植物なら置くだけでインテリアのイメージを大きく変えることができます。
「テレビの横の空間に合いそう」などと置き場所から考えるのもいいですし、「この曲線の魅力は自分にしかわからない!」と、運命の出会いを探すのも楽しみ方のひとつ。とくに、枝のシルエットは一つとして同じものがなく、購入後に自宅でイメージ通りの樹形に整えるのは難易度が高く時間もかかるため、好みのシルエットに出会ったら、迷わず入手することをおすすめします。
お店で相談する際には、あらかじめ置く場所を想定し、どんなインテリアか、壁はあるか、直射日光が入るのかなどの条件を整理しておくと、選んでもらいやすくなります。
部屋をフレームに見立てて、
構図を決める
居住空間に植物を飾るときは、部屋を四角いフレームに見立てると、バランス良く配置できます。左上に吊った観葉植物があれば、右下に鉢を配置するなど、フレームの中で足し引きしてみてください。例えば、下の方に重心を持っていくフレームにするなら、下にインパクトのある植物を持ってくるなど、比重を考えます。
とはいえ、一時は整っても、植物は成長し変化するものです。葉は光を求めて窓の方に向かっていくので、一度レイアウトを決めたら終わりではなく、1〜2ヶ月に1度を目安に、向きを変えて伸び方を調整してみてください。もちろん、自然のままに伸ばしていくのも付き合い方のひとつです。「形が変わってしまった」とマイナスに考えずに、環境になじんでいっていると考えて、植物ならではの“変化するインテリア”を楽しんでください。
植物をインテリアとして生かす場合、鉢や鉢カバーの色や素材も大切な要素です。壁が青色なら鉢も青色と、色合わせをするとまとまりが良くなり、植物のシルエットも引き立ちます。目安としては、空間全体の2〜3割にアクセントカラーを使ってみてください。
季節、香り、葉の形…五感で選ぶ、
部屋別の植物
一般的に、店頭で売られている観葉植物は、インドアでも育てやすい強い品種です。室内の光量でも、多少風通しが悪くても、サーキュレーター等で環境を改善できれば問題がない場合が多いので、ルールに縛られすぎずに、楽しんでみてください。
帰宅して一番に目につく玄関は、季節感を大切に。花瓶は花がなくてもオブジェとして楽しめるものを。口の狭い花瓶なら、少ない本数で収まりも見栄えも良くなります。反対に、口の大きいものは大きな葉ものをふちに引っ掛けるようにして飾ると、少ない本数でも楽しむことができます。
リビングには、空間の主役になるような、シルエット重視のシンボルツリーを。上にスッと伸びて広がっている植物を選ぶと、ソファ横などのスペースに美しく収まります。設置スペースが限られる場合は、フレームの考え方を使って1部屋の中に3種類ほどを配置します。天井の照明レールを生かして、乾燥に強いシダ植物を吊るすのもおすすめ。正面から見た時にグリーンが奥につながっていくように配置すると、奥行きが生まれます。
全体のフォルムや色、香りはもちろん、葉の形にも注目してみてください。一般に、葉の尖った植物はアグレッシブな気持ちに、反対に、葉の丸い植物は優しくリラックスした気持ちにさせてくれます。トレーニングルームはアクティブに、寝室は穏やかにと、お部屋の役割に合わせて選ぶ楽しみがあります。
自然にまかせて
成長させる
「植物は太陽に向かって成長する」という習性をうまく活用すると、育てる楽しみがさらに広がります。鉢をわざと横に倒して育ててみると、もともと生えていた方向とは違う方向へ葉や枝を伸ばし、独特なシルエットが生まれます。こうして意図的に自分好みのフォルムを作るのも通な楽しみ方。目の前で変化と成長が見られる魅力的な存在です。ぜひ、あなた好みの形に育ててみてください。
家で上手に植物を育てるポイントは、水の管理です。近年は「冬越し」より「夏越し」が難しくなっています。その理由は、水やりのタイミング。夏に水をやってから空調を切って外出すると、部屋が蒸れて根腐れを起こしてしまいます。水やりは家にいて、空調をつけられる時間に行うといいでしょう。寄せ植えの場合は小さな鉢に分けてあげると水が乾きやすく、水量の管理がしやすくなります。
植物の魅力を裏付ける
「バイオフィリア」
近年は建築や都市デザイン、インテリアデザインの分野でも、環境心理学の概念「バイオフィリア(=自然とつながりたいという本能的欲求)」に基づいた「バイオフィリックデザイン」が大きな潮流となっています。私たちが暮らし、働く空間に植物や水があり、太陽の光が差し込むことで、心が落ち着き、リラックスできる空間が生まれます。このような自然によって幸福だと感じられるのは、人間の根源的な欲求に基づくものと考えられているのです。
また、このような空間では自然と日光や風通しの良さを意識し始めるため、人間の心身にとっても快適な環境となります。植物のある空間にはリラックス・リフレッシュ効果があり、仕事の生産性向上にも有効だというのが定説となっています。
花や緑の流通量が増え、選ぶ楽しみが広がる5月は、ボタニカルライフを始めるのに最適な季節。ぜひ、園芸店やインテリアショップに足を運んで、お気に入りを探してみてください。オンラインギフトやギフトカタログなら、プロが選んだお花を家にいながら手軽に楽しめます。離れた場所で暮らす家族や、友人・知人へのギフトにも最適。GWは三井のすまいLOOPで植物のある暮らしを考えてみませんか? 植物は、これから夏にかけてどんどん成長していきます。新芽を見つけたり、剪定をしたりと、自分なりの関わり方を見つけて、変化と発見の日々を楽しんでください。